本学会は、戦後間もない1946年に設立された「フランス文学会」(4年後に「日本フランス文学会」と改称)と、1951年に設立された「フランス語学会」(翌年「日本フランス語学会」と改称)が、「日本におけるフランス語フランス文学研究の発展と普及に寄与すること」を共通の目的として合併し、1962年に設立されました。爾後、毎年春季と秋季の二回開催される全国大会、および7つの支部会における研究発表、学会誌や研究誌の発行、内外の研究者による講演会やシンポジウムの開催、スタージュの実施等々、半世紀以上にわたって多彩な活動を展開するとともに、会員間の交流・親睦と情報交換の貴重な場として機能してきました。 21世紀もすでに十数年を経た現在、グローバル化の進行にともなって英語以外の外国語教育が縮減傾向にあり、経済効率優先の政治によって人文学軽視の風潮が醸成されつつあることは否定できません。文部科学大臣名で国立大学法人学長及び各大学共同利用機関法人機構長宛に発出された2015年6月7日の通知文書に、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院を特に指定して「廃止・転換を含めた組織の見直しに積極的に取り組む」よう求める一節が含まれていたことは、まさにこの動きを象徴するできごとでした。 こうした流れの中で、若い優秀な人材が安心して学問に打ち込めるような環境が次第に失われ、語学・文学研究から遠ざかってしまうとすれば、これはまことに残念な事態であると言わねばなりません。その意味で、本学会を取り巻く状況は確かに厳しさを増しています。しかしこうした時代にあってこそ、私たちはみずからの研究の学術的・社会的意義を明確にしつつ、広く世界に向けてその成果を発信しなければならないのではないでしょうか。 幸い、本学会には日本だけでなく、フランスあるいはフランス語圏でもその研究実績が高く評価されている会員が少なからず存在します。また、近年は国際的な舞台でめざましい業績をあげる若手研究者も輩出しています。彼らの活躍ぶりを見る限り、日本のフランス語フランス文学研究の未来は明るいと断言しても差し支えないように思います。 学会の草創期を支えた名誉会長の辰野隆、元会長の鈴木信太郎、渡辺一夫、桑原武夫等々の碩学は、単にフランス文学研究者としてだけでなく、日本の人文学を代表する象徴的な存在としてわが国の文化を牽引してきました。こうした過去の誇るべき知的伝統を確実に継承しつつ、来(きた)るべきフランス語フランス文学研究の新たな展望を切り拓くことを目指して、本学会はさらに努力を重ねて参る所存です。会員の皆さんがたがいに切磋琢磨して、学会のさらなる発展に寄与して下さることを切に願っています。