フランス語教育国内スタージュ(Stage)

過去のスタージュ

2007年3月30日 12時42分 [WEB担当]

スタッフのことば

模擬授業 講師の感想
 今年は17名の受講者を2つのグループに分けて、一つはIsabelle Morieux さん、もう1つを私が担当しました。教えた経験のない学生からかなり長い経験のある方まで様々な受講者がいましたが、教材については皆同じ状況にするため、出版されたばかりのAlors ? というテキストを使用して、あらかじめ提示された枠組み(学習者、授業時間数、等の指定)の中で受講者一人一人に15分~20分程度の模擬授業をフランス語で行っていただきました。

 今回の模擬授業が全く初めての「授業」となる方にとっては不安なことも多かったと思いますし、また経験豊かな方にとっても生徒役が他の受講者やオーガナイザーメンバー、講師たちという雰囲気の中で授業をすることは短時間ではあってもとても緊張する経験だったことでしょう。
 
 しかし、そんな緊張する状況にも関わらず、受講者たちは各自の設定した授業目標に従って様々なタイプの工夫を凝らしたactivitéを実践してくれました。他人の真似をするのではなく、各自が自分のカラーを出した模擬授業になりました。生徒役の皆さんからは有益で具体的なアドバイスがなされ、受講者にとっては「自分でも知らなかったことを知る」機会になったことと思います。受講者の皆さんの短時間での授業準備と、フランス語で模擬授業を行った勇気に心から敬意を表します。Merci beaucoup à tous !  (中村公子)

模擬授業 事務局スタッフの見学記1
 招聘講師イザベル・モリュー氏が進行役の模擬授業では、9名のスタジエールが発表した。教室では本スタージュで講師を務めた飯田、鵜澤およびスタッフから鈴木幹事長、有田総務、途中から部員の明石が傍聴し、スタジエールの模擬授業が終わるごとにコメントした。講師のお二人からは、声の出し方やボードの使い方、ハンドアウトの指示文の是非など手厳しい助言が多かったが、それも授業を経験しているからであろう、スタジエールらは謙虚に聞き入っていた。かつて留学中にパリ第3大学の教授がレバノン人の発表者に対して言った印象深いことば、「前を向くんだ、原稿を読むな。たとえ、しどろもどろになっても、相手の目を見て話すんだ」を、わたしも繰り返していた。模擬授業はすべてフランス語でなされ、これまで授業経験のない学生にはかなりの負担だったと思われるが、それでも模擬授業の共通教材としたAlors ? を使いこなして見事な発表が相次いだ。昨年と比較して、よく練られた、破綻の少ない授業が多かったように思う。それはdocument authentiqueを自分で授業に加工したケースが相次いだ昨年と較べ、一応、教科書に編集されたテクストを使いこなす点に努力が集中したからであろう。

 モリューさんとは初日の食事会で、フランス語のみの模擬授業は経験の浅いスタジエールには負担が多すぎないか、と水を向けたところ、自分はintransigeanteだから断固としてフランスでの研修のようにする、とおっしゃったので少し議論になっていたが、スタジエールのパフォーマンスがこちらの杞憂であったことを証明した恰好になった。とはいえ、他のスタジエールを生徒(apprenant)に見立てての模擬授業では、発表者が不自然さを意識して固くなったり、思わぬリアクションに対応しきれなかったりと、苦労のあとがしのばれた。来年は、本物の学生(たとえば日仏学院の)を教室に連れてきてもよいかもしれない。

スタージュ全体 事務局スタッフの見学記2

 3日間の短期間の講習と研修にもかかわらず、現場教員と教員志望の学生からなるstagiairesはそれらをさまざまにアプローチして検証し実験的体験したことを、多様な模擬授業として表現できたと思う。自己紹介を授業の導入として活用したり、参加型の授業を目指して全身のリズムで語彙習得を試みたり、最新のFLEの教科書Alors ? の写真映像の文化的読みとりとした活用したり、実物提示による参加型授業を試みたりとたいへん刺激的な模擬授業でした。そして、それを参観した講師陣や事務局スタッフのコメントも構築的で、stagiairesはそれを積極的に今後の教育経験に反映させる熱意があった。成功したstageだったろう。

まとめ
 2007年度のスタージュは、日本フランス語フランス文学会・日本フランス語教育学会・フランス大使館による共催という新しい体制で開催された第2回目にあたる。今年から会場を飯田橋の東京日仏学院に移し、3月25日(日)の開会式に引き続いて、その後3日間の日程が順調に遂行された。総勢17名の参加者は、フランス語教員を目指す大学院生から、教育経験が既に豊富なベテラン教師まで、このうえなく多様性に富み、お互いに刺激を与え合うには絶好のメンバーとなった。招聘講師のイザベル・モリユ氏(CAVILAM)は、Méthodologie du FLEやMéthodologie des documents authentiques écrits / oraux の講義を通じて、フランスからの新風をもたらした。さらに「発音をどう教えるか」(鵜沢恵子氏)、「文法をどう教えるか」(中井珠子氏)、Cadre commun de référence & DELF/ DALF(クリステル・ル・カルベ氏)、「教材活用」(飯田良子氏)、「日本人教員とフランス人教員との協力による授業運営」(國枝孝弘氏およびパトリス・ルロワ氏)など、各分野にわたる興味深い講義が、参加者の語学教育に対する関心を高めた。中村公子氏は、招聘講師と共に携わるスタジエールの模擬授業に向けて、初日から最終日まで大変精力的に活動された。このフランス語による模擬授業は、スタジエールにとって貴重な体験となったようであった。総括の討論会では、スタジエール・講師・スタッフのあいだで、感慨深く有意義な感想やコメントが交わされた。新体制による2年の経験をふまえて、スタージュがさらに充実したものとなるよう進化して行くことを願いたい。(明石伸子)