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2006/05/20

(6)旅とエクリチュール

| by 広報委員会
2006年度春季大会 ワークショップ(6)

旅とエクリチュール
Co.
パネリスト

 水野 尚(神戸海星女子学院大学)
 増田真(京都大学)
 和田章男(大阪大学)




「旅とエクリチュール」と題した私たちのワークショップでは、recit de voyageを、真実(dire vrai)でありながら読んで楽しいrecitであり、17世紀半ばに成立した文芸ジャンルとして提示し、18世紀から20世紀における変遷をたどった。まず最初に増田は、18世紀を通して旅行文学が他の分野にも思想的に多大な影響を及ぼしながら、探検記的な科学的旅行記とより文学的な旅行記が分かれていく過程を明らかにした。水野はロマン主義時代の旅行記が「私」の印象記的になり、書かれている内容の信憑性が外的世界との対応以上に語りの様式に依存することに焦点を当てた。最後に和田が20世紀の特色として、旅を記述することは未知なる現実のレフェランスを志向するのではなく、未知なる自己の発見を志向するようになったことを明らかにしながら、最初に定義したジャンルとしての旅行記は終焉を迎えたのではないかという仮説を提示した。

会場は座りきれないほど盛況であり、3名の報告の後、活発な議論が行われ、バルザック、スタンダール、フローベール、ジュール・ヴェルヌ、ユイスマンス、ジッド、ロラン・バルト等に関する情報が提供された。また、21世紀において旅行記は終焉を迎えたというよりも、むしろこれまで以上に活況を呈しているのではないかという説も提示され、ジャンルとしての旅行記の定義によっては別の角度からのアプローチも可能であることが示された。また、シラノやガリヴァー等のような架空の旅行記ではなく、実際の旅行に基づくrecit de voyageに限定した議論の中でも、現実を参照するエクリチュール(ecriture referentielle)に対する疑義が出され、文学と現実の関係の複雑さにも議論が及んだ。ちなみに、ワークショップのコーディネーターの役割は、一緒にカラオケに行ってみんなで歌おうと言いながら一旦マイクを握るとなかなか離さないという状況に陥らず、約束通りみんながそれぞれ歌うことのできる場を作り出すことにあると考えて臨みました。実際にみなさんに歌っていただけたかどうかは、会場に足を運んでくださった方々の判断に委ねたいと思います。 
16:40