(4)人類学的思考とモダニティ
人類学的思考とモダニティ
Co. パネリスト | 千葉文夫(早稲田大学) 竹内信夫(東京大学) 真島一郎(東京外国語大学) 鈴木雅雄(早稲田大学) |
1941年2月、ブルトンとレヴィ・ストロースが旅の途中で出会う挿話を出発点として、人類学的思考が文学・芸術とどう関係するかを探ろうとするワークショップ。マラルメ研究のほかにレヴィ=ストロースの翻訳に取り組んできた竹内さん、シュルレアリスムと人類学の交錯を扱う論集『文化解体の想像力』の編者である真島さんと鈴木さんをパネリストに迎えた。
鈴木さんは、「結びつける」操作という点からブルトンとレヴィ=ストロースを対比的にとらえてみせた。後者がメタフォリックな関係を排除するのに対して、前者はアナロジーの原理によって、距離化をはかりながらも結びつけようとするという指摘があり、両者の身振りの違いが浮き彫りにされた。船上でのブルトンの姿を映す写真にはじまるスライド上映が平行してなされた。
真島さんはこの機会にシュルレアリスムなど20世紀の運動体の性格をどのように捉え直すかという点について考えたいと述べられ、オペラあるいはシャリヴァリをめぐってレヴィ=ストロース、レリス、トムソンのあいだにどのような姿勢の違いがあるかに言及、さらにデュルケムからモースへ継承されるフランス民族学の流れには日本語には訳しにくい「モラル」をめぐる思考が関係しているという指摘がなされた。
竹内さんは、翻訳の仕事も含めて、これまでレヴィ=ストロースに付き合ってきたのは、むしろ作家的側面への興味によるものであり、とくに「野生の思考」、「感覚的なもの論理」、「種間倫理」をめぐる発言に共感を抱いていると語られた。
司会者よりスライド上映をもとに、今日ルーヴル美術館の一角には、かつてレヴィ=ストロースやブルトンが所有していたオブジェが展示されているという紹介がなされたあと、質疑応答に入り、会場からは、人類学研究とフランス文学研究の関係、「人類学的思考」の意味、「野生の思考」と「栽培された思考」の対比をめぐって次々と質問が出され、活発な議論が繰り広げられた。