パリ映像の世紀
パリ映像の世紀
パネリスト | 岡村民夫(法政大学) 今橋映子(東京大学) 谷昌親(早稲田大学) |
20世紀におけるパリの視覚的表現のあり方をめぐって、言語表現との関係を考慮しながら三つの発表がなされた。
まず今橋映子氏による「<パリ写真>とは何か」。<パリ写真>を「パリとパリ人を主題とするストレート写真」と定義し、外国人写真家の活躍、写真集の重要性、モダニズムおよびシュルレアリスムの影響などを説明き、最後に、1980年代以降<パリ写真>がフランスの文化行政と大量消費の対象となった結果、皮肉にも衰退してしまうという問題を指摘した。
つづいて谷昌親氏による「シュルレアリスムにおけるパリの視覚的表象」。ブルトン、スーポー、アラゴン、バタイユ等が、写真、映画、都市についてどのような見方をしていたかを豊富な引用によって紹介し、オートマチスム、通常の知覚を超えた知覚の探求、「痙攣的な美」の概念、パサージュへの関心などが、写真や映画の諸傾向と呼応することを説いた。
最後に、コーディネータの岡村民夫による「ゴダールはパリを愛しているか」。撮影所の外に広がるノイズとして「パリ」を発見したヌーヴェル・ヴァーグ監督のゴダールは、叙情性を振り捨てるべく1965年頃「パリ別れ」を敢行したと説いたうえで、彼の『愛の世紀』(2001)を「アルシーヴ」としてのパリの再発見と位置づけ、さらに郊外の再開発問題と関連づけた。
パネリストごとに写真や映画がプロジェクトされ、非常にヴィジュアルなワークショップとなったと自己評価するが、その半面、発表に時間がかかり質疑応答の時間が短くなってしまった点を反省する。(岡村)