2004年度春季大会報告
ニュース117号(2004.7.10)より
総務 佐野泰雄
日差し、気温、湿度とも日本の夏を十分に感じさせる5月29日(土曜)、30日(日曜)の両日にわたり、白百合女子大学にて2004年度春季大会が開催された。正門を入り、豊かな緑のなかを緩やかに蛇行するアプローチを進むと、美しい学舎の立ち並ぶ大学の中心に導かれる。まことに瀟洒なキャンパスである。
大会第1日は、午前中に各種委員会、午後早く幹事会および役員会が開かれた後、1号館1308教室において14時20分より開会式が行われた。司会は白百合女子大学の篠田勝英氏。大会実行委員会委員長である山辺雅彦氏の開会の辞に続いて、白百合女子大学大京子学長より、設立母体のシャルトル聖パウロ修道女会、前身の仏英和高等女学校など、同大学が持つフランスと深い縁の紹介とともに、本会2004年度春季大会の開催歓迎のご挨拶をいただいた。これに対して、菅野昭正会長が答礼の言葉を述べた。
ひきつづき研究発表が行われた。第1部は14時40分より16時10分まで、第2部は16時30分から18時までである。合計33人が13の分科会に別れて研究発表を行った。いずれも盛会であった。
夕刻、レジナホールにて懇親会が行われた。篠田勝英氏の司会のもと、副会長柏木隆雄氏、ならびにフランス大使館文化担当官Pierre Koest 氏の挨拶、鈴木道彦氏の乾杯の音頭で始まった宴であったが、150名を越える参加者を迎えたこともあって、熱気溢れる交歓の場となった。途中、翌日の講演予定者であるMichele Hecquet氏、ならびにRene Depestre氏から挨拶をいただいた後も、楽しく賑やかな時間は快く流れていき、気がつくと終了の定刻を過ぎてしまっていた。われわれの学会のみならず人文系学問領域が直面している厳しい状況をひとときでも忘れさせるような活気に満ちた宴であった。
翌第2日は、「翻訳文学の可能性」と題されたシンポジウムで幕を開けた。時間は9時30分から12時までの2時間30分、司会は東京大学の塚本昌則氏、パネリストは、管啓次郎(明治大学)、真島一郎(東京外国語大学)、野崎歓(東京大学)、Jacques Levy(明治学院大学)の4氏である。それぞれの立場から興味深い報告がなされ、会場から質問も活発で、刺激的なシンポジウムになったが、パネリスト間の討論に割く時間がなかったことが悔やまれる。
昼休みをはさんで午後、二つの特別講演が行われた。Michele Hecquet氏(リール第3大学)の ≪ “Histoire de ma vie”, autobiographie du milieu du siecle et ses silences ≫(12時45分から13時45分、司会神戸大学坂本千代氏、別掲記事参照)、および作家・評論家Rene Depestre氏の ≪ La litterature haitienne d’aujourd’hui et la francophonie ≫ (13時50分から14時50分、司会一橋大学恒川邦夫氏、別掲記事参照)の二つである。静謐で学究的な前者と、躍動的で時には奔放な勢いを持つ後者という対照的な配置はまことに趣のあるものであった。
その後、14時55分より早稲田大学の川瀬武夫氏を議長として総会が開かれた。議長の粛々とした議事運営によって、人事案件を含めすべての議事がつつがなく終了した。
総会終了後、開催校に対する菅野会長の謝辞に続き、実行委員長山辺雅彦氏が閉会の辞を述べられ、本大会はその幕を閉じたのであった。参加者総数557名である。
以前よりの制度的改革の移行時期に行われた本大会であったが、これを見事な成功へと導かれた山辺雅彦委員長をはじめとする実行委員会のスタッフの方々には深い敬意と感謝を表明したい。また、大きな後ろ盾となって下さった白百合女子大学に対しても心からお礼を申し上げる。あの正門から緩やかな曲線を描いて続くアプローチや、夢のようなたたずまいを見せる学舎は、永く参加者の記憶にとどまるだろう。