Site Web cahier ── 書評・エッセー・研究レヴュー

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2007年7月10日 14時25分 [WEB担当]

cahier 00, juillet 2007

書評

書評欄の開設に寄せて     会長 塩川徹也

 書評が人文学、とりわけ語学文学研究において、どれほど重要な役割を果たすかについて、あらためて述べ立てる必要はあるまい。論文であれ著書であれ、研究者の積年の業績を真剣にまた敬意をこめて受容し、評価し、紹介することは、成果の生産と並んで、学会活動にとって車の両輪と言ってよい。フランス文学についていえば、Revue d'Histoire littéraire de la France を始めとする欧米の研究誌の大半は充実した書評欄を設けているし、日本における他の外国文学研究でも、たとえば日本英文学会は書評に大きな重点を置いているように見受けられる。我々の学会がこれまで書評に取り組んでこなかったのは、むしろ不思議とさえいえるが、20世紀後半のフランス語フランス文学隆盛の機運の中で、会員それぞれが自らの研究に打ち込むあまり、同志たちの労作を吟味し、学界の動向を振り返る余裕がなかったのかもしれない。また20数年前から本学会として関与した『フランス語フランス文学研究文献要覧』の編集作業に多くの精力を費やしたために、書評にまで手が回りかねたという事情もある。研究書誌の作成と更新はもちろん人文学に不可欠の基礎作業であり、決してなおざりにしてはならないが、国立情報学研究所や国会図書館の充実したデータベースが容易にアクセスできるようになった現在、学会として力を注ぐべきは、網羅的な書誌作成より、内容の紹介と吟味を軸とする書評であろう。たとえば、RHLF の場合も、書評は内部の書評委員会が編集を担当しているが、年に一度発行される『フランス文学書誌』は、フランス国立図書館の René Rancœur、そして今は Éric Férey が受け持っている。こうして本学会でも、去る5月に開催された春季大会の総会で、資料調査委員会の提案により、日本におけるフランス語フランス文学の成果を収集し、書評により公開することが決定された。今回お届けするのは、その最初の試みである。この書評欄が、学会員及びそれ以外の研究者の業績の紹介と評価を通じて、日本のフランス語フランス文学研究の現状を省み、未来を展望する場となることを切に願っている。読者の暖かい支援と忌憚のない批判を期待したい。最後になったが、これまで『フランス語フランス文学研究文献要覧』の編集作業に誠心誠意尽力してこられた資料調査委員会の歴代の委員の方々、そして今回の書評欄の開設計画を推進された永井典克前委員長に深い感謝の気持ちを捧げたい。