J・P・サルトルと19/20/21世紀文学
J・P・サルトルと19/20/21世紀文学 ─ 驚異、贈与、倫理
パネリスト | 澤田直(白百合女子大学) 若森栄樹(獨協大学) 永井敦子(上智大学) |
サルトル生誕100年にあたり、批評家としてのサルトルに焦点を絞り、その射程を討議するワークショップを行った。サルトルはカミュをはじめとする同時代の作家について多くの評論を発表したのみならず、フローベール、マラルメといった19世紀の作家にもひとかたならぬ関心を寄せて、本格的な論考を書いた。その一方で、アンガジュマンの思想は、ポストコロニアル批評に見られる倫理性に大きな影響を与えた。にもかかわらず、批評家サルトルに関する検証はこれまで主題的には行われてこなかった。ワークショップのタイトルを「J・P・サルトルと19/20/21世紀文学--驚異、贈与、倫理」とやや大風呂敷を広げた感じで、名づけた所以である。
コーディネータ澤田直が、まずサルトルの批評作品を分類整理して紹介し、主要な作品の位置づけに関する見取り図を描いたあと、『文学とは何か』と『フローベール論』について、読書論の観点からコメントをつけた。それにつづいて、若森栄樹さんが『ユダヤ人問題に関する考察』を文学的観点からレクチャーし、驚異、贈与の問題と連関させつつコメントを寄せた。その後、永井敦子さんが、ジャコメッティ論をはじめとするサルトルの美術評論全体の見取り図をていねいに描いた後、シュルレアリスムとの関係にもふれつつ、サルトルの美術批評の知られざる側面などを紹介した。以上のそれぞれ25分程度のパネラーの提言が終わったあと、3人が補足的な発言を行い、引き続き、会場も含めた全体討論に移った。フロアからは、ユダヤ人問題とサルトルの関係、倫理と道徳の差異、サルトルとシュルレアリスムの接点、サルトルの政治思想の現在性など多岐にわたる質問や多くのコメントが寄せられ、たいへん活発なワークショップとなった。百人近い参加者を得て、サルトル健在なりという思いを新たにするセッションであった。(澤田)