2003年度春季大会報告
ニュース114号(2003.7.5)より
総務 永見文雄
2003年度春季大会は、5月31日(土)と6月1日(日)の両日、生憎この季節には早すぎる台風に直撃されるという悪条件の中で、埼玉県草加市の獨協大学を会場に、それでも全国から465名の会員が参加して開催された。
大会初日は、9時から4棟で各委員会が開かれたあと、10時半から6棟507会議室で2002年度最後の幹事会、引き続いて役員会、さらに学会奨励賞選考委員会が開催された。昨年は推薦のなかった学会奨励賞も、今年は2つの支部から1名ずつ計2名の推薦があり、これを受理して審査委員を決定した(別掲報告を参照)。昼食ののち、13時半より6棟101教室にて、獨協大学の江花輝昭氏の司会により、開会式が行われた。大会実行委員長の山田秀男氏の開会の辞では、今回は18年ぶりの獨協大学における開催となる旨の紹介があり、獨協大学学長桑原靖夫氏の開催校代表挨拶では、開催校の沿革が披露された。今年で創立120周年を迎える獨協学園は、主としてドイツの学問・文化を学んで日本の近代化に貢献してきたが、獨(ドイツ)学協会学校が1883年(明治16年)に開校した時の初代校長が西周であったように、フランスとも浅からぬ縁があることなど、桑原学長は興味深いお話を交えて歓迎の挨拶とされた。これに対して菅野昭正会長が、返礼の挨拶を述べた。
14時半からは研究発表会が行われた。従来2日目に行われていた研究発表会と懇親会を大会初日の土曜日に持ってくる初の試みであったが、1部と2部、合計14の分科会に別れて、全部で37の盛り沢山の発表が18時近くまで続くなど、常に変わらぬ盛会であった。
恒例の懇親会は、場所を移して35周年記念館2階の学生食堂で、18時半から行われた。江花輝昭氏の司会、柏木隆雄副会長の挨拶と乾杯の音頭で始まり、中ほどで、翌日の特別講演の招待研究者であるアントワーヌ・コンパニオンAntoine Compagnon氏(パリ第4大学)とパトリック・ラバルトPatrick Labarthe氏(パリ第3大学)、さらに日本プルースト研究会のシンポジウムで来日中のナタリー・モーリアックNathalie Mauriac Dyer氏(C.N.R.S.)とパトリツィア・ロンバルドPatrizia Lombardo氏(ジュネーヴ大学)の4人連続のフランス語による挨拶が入るなど、依然として降りしきる雨もしばし忘れる賑やかな肩の凝らない会となった。同じ日に予定されていたフランス大使館のレセプションは結局土壇場で大使館側の都合により中止となったため、同文化部のジャン・ノエル・ジュテJean-Noel Juttet氏も喜んでこちらの会に参加された。参加者数は156名。
大会2日目は、午前中が特別講演にあてられた。5棟128号室を会場にして上智大学の吉村和明氏の司会で10時5分に始まったラバルト氏の講演はゆったりとした大きな声と力強い話しぶりで美しいフランス語をたっぷり聞かせ、静かに熱心に耳を傾ける聴衆を魅了した。台風の影響で会員の出足が心配されたが、終わる頃には120名を数えた。続くコンパニオン氏の講演は東京大学の中地義和氏の司会で進行したが、こちらは2回目ということもあって和やかな雰囲気のうちにきわめて軽快にリズミカルに疾走する体の講演で、12時20分に終わる頃には参会者も150名を越え、会場は満席であった。2つの講演とも質疑応答が活発に行われ、充実した時間を共有することができた。特別講演の企画と準備にたずさわった全ての関係者に深甚の謝意を表したい。
昼食をはさんで13時半から同じく5棟128号室で独協大学の伊藤幸次氏を議長に総会が始まった。最初に会長・副会長選挙の予備選の開票結果が選挙管理委員会から報告され、議事と平行して本選挙の投・開票が行われた。会長には菅野昭正、副会長には塩川徹也、柏木隆雄の3氏が、いずれも第1回の投票で再選され、それぞれ受諾の挨拶をされた(別掲報告を参照)。議事の方は総会議長をつとめてくださった伊藤幸次氏のユーモアとゆとりのある司会ぶりのおかげで、人事案件を含めてすべての議事がつつがなく終了した。
15時半の総会終了後ただちに閉会式に移り、はじめに菅野会長の挨拶があった。1953年(昭和28年)の慶應義塾大学における大会を振り返り、当時の会員200名と比べると本会の発展ぶりは実に目を瞠るものがあるとの指摘に続いて、開催校と関係者に謝辞が述べられた。最後に獨協大学の穂苅瑞穂氏の閉会の辞で大会は幕となった。(研究発表会、特別講演、総会については、別掲各報告を参照のこと。)
常任幹事会で大会運営マニュアルを作成して初めての、しかも従来にないいくつもの試みを伴った本大会であったが、幾多の困難を克服してこのような成功へと導いてくださった山田秀男大会実行委員長をはじめとする獨協大学のスタッフのかたがた、大会をバックアップしていただいた獨協大学、ならびに会場設営や受付などの面倒な仕事を立派に果たされた同大学の学生諸君に対しては、この場をお借りして心からの御礼を申し上げたい。また本会事務局の頼りになる2人の書記、丸山理絵氏と漆原みゆき氏には、いつもながらの抜かりない完璧な仕事ぶりで事務局側の準備を綿密に進めていただいた。深い感謝の気持ちを捧げたい。最後に幹事会の中核となってともに働いた常任幹事会の同僚諸兄姉に対しても、篤い感謝と敬意の念を表したい。