2003年度秋季大会報告
ニュース115号(2003.12.5)より
幹事長 佐野泰雄
2003年度秋季大会は、10月25日(土)、26日(日)の両日にわたり、大阪は箕面の大阪外国語大学の緑深いキャンパスで開催された。まことに、天朗かにして気清む環境と天候とに恵まれた大会であった。
大会第1日は、午前中に各種委員会、および役員会が開かれた後、D棟大講義室において12時50分より開会式が行われた。司会は大阪外国語大学の木内良行氏。大会実行委員会委員長である岩間正邦氏の開会の辞に続いて、大阪外国大学是永駿学長より、人文系の学問領域を取り巻く厳しい社会情勢に共同で立ち向かうべく、熱い連帯を込めたご挨拶をいただいた。これに対して、菅野昭正会長が答礼の言葉を述べた。
ひきつづき13時15分より、同大講義室にて、京都大学の永盛克也氏の司会により、アカデミー・フランセーズの Marc Fumaroli 氏による特別講演 《Chateaubriand et Tocqueville: deux aristocrates liberaux devant la democratie》 が行われた。これは、両者の近縁性、共通性(たとえば、「民主主義」を前にした明澄なる知性の所持)に着目したもので、講演者の円熟した語り口とも相俟って、聴衆を魅了するところ大であった。
次に、14時30分より《テクストの此岸、テクストの彼岸 ── 多様化するマラルメ研究》と題されたシンポジウムが開催された。司会は東京大学の竹内信夫氏、パネリストは東京大学石田英敬氏、電気通信大学兼子正勝氏、早稲田大学川瀬武夫氏である。教養崩壊、メディア論、マラルメの社会的野心あるいは社会的キャリア、爆発点としての特異語などをキイワードとして、マラルメ研究の新たな可能性が論議され、聴衆に様々な示唆を与えた。また、シンポジウムの進行は即興性に富み、さながらジャズ演奏のジャムセッションに立ち会っているような興趣を抱かせた。
夕刻、場所を千里阪急ホテルに移して懇親会が行われた。特筆すべきは、その前に置かれたコンサート「フランス歌曲の夕べ」である。しっとり落ちついた雰囲気のなか、詩の理解と正確な発音に支えられたバリトン鎌田直純氏の歌唱が深い感動を誘った。ピアノ伴奏者小坂圭太氏との息もぴったりで、心洗われる思いがした。試みとしては大成功であったように思う。
懇親会には145名の参加者があった。宴は、実行委員長岩間正邦氏の司会のもと、副会長塩川徹也氏の挨拶、大阪外国語大学名誉教授原田武氏の乾杯の音頭で始まり、終始和やかで快い雰囲気のうちに歓談のひとときが過ぎていった。中ほどで、新任のフランス大使館文化担当官である Pierre Koest 氏、コンサート出演者鎌田直純氏からご挨拶をいただいた。冒頭の副会長塩川氏の挨拶、および終わり近くの、東京都立大学に関する同大学大久保康明氏のアナウンスなどから、われわれの学会のみならず人文系学問領域が直面している厳しい現実を意識させられたが、それだけにいっそう、この夕べの集いが提供する楽しい時間が貴重なもののように感じられた。
翌第2日は、パリ第3大学の Michel Collot 氏の 《 Tendances de la poesie contemporaine francaise 》 と題された特別講演で始まった。時間は10時から11時までの1時間、司会は筑波大学の Franck Villain 氏である。Collot 氏の講演は、ロゴス(言語のありよう)、アントロポス(自我)、コスモス(世界との関わり)を鍵概念とした分析をもとに、フランス(語圏)の現代詩の、1960年代から現在までの明快な見取り図を提供するもので、まことに啓発的であった。
11時10分より15時まで、昼休みをはさんで、午前の部、午後の部にわたり11の分科会に別れて、計27の研究発表が行われた。
その後、15時10分より関西大学の本田忠雄氏を議長として総会が開かれた。予定された議事の後にも、総会参加者から議題が提案され、二、三の意見交換があったが、議長の粛々とした議事運営によって無事に総会を終えることができた。
総会終了後、開催校に対する菅野会長の感謝の言葉に続き、実行委員長岩間正邦氏が閉会の辞を述べられ、本大会はその幕を閉じたのであった。参加者総数425名である。
制度的改革の移行時期に行われた本大会であったが、これを見事な成功へと導かれた岩間正邦実行委員長をはじめとする大阪外国語大学のスタッフの方々には深い敬意と感謝を表明したい。また、大きな後ろ盾となって下さった大阪外国語大学に対しても心からお礼を申し上げる。