わたしのなかのアルジェリア ― 多声と多形の作品創造
コーディネーター・パネリスト:石川 清子(静岡文化芸術大学)
パネリスト:青柳 悦子(筑波大学)、鵜戸 聡(鹿児島大学)
20 世紀後半、〈フランス文学〉に対して補完的に配置された〈
フランス語圏文学〉は、その枠組が曖昧なまま変容する世界の文学 情勢のなかで論じられてきた。そのなかで〈
フランス語アルジェリア文学〉は、
他のマグレブ諸国の文学とは異なる位相を呈しつつ 旺盛に書き継がれている。現在、誰がいかなる書法で、
どこで書いているのか。
アルジェリア的なるものを発信する作家はアルジェ リア人に限定されない。その書き手はフランスの移民二世〈
ブール〉と以降の世代、引揚者(ピエ・ノワール)、亡命者など、
アル ジェリアとフランスを主にしつつも世界各地に及び、
その作品も従来の文学の枠を越境している。本ワークショップを、
水声社から 刊行開始されたマグレブ文学翻訳叢書〈エル・アトラス〉
紹介の場にもしたい。
青柳は、生後すぐにアルジェを離れたバンド・デシネ作家、
ジャック・フェランデズを紹介。
仏統治下アルジェリアの絵巻でもあ る『オリエント手帖』とカミュ翻案『客』『異邦人』『
最初の人間』を参照しつつ、今まで照射されなかったピエ・
ノワールをめぐ る問題、カミュのアルジェリア性を捉え直す。
しばしば〈ブール〉の作家に数えられるレイラ・セバールも、
自身の欠落したアルジェリアをフランスから追求する。石川は、そ の第一小説『ファティマ、辻公園のアルジェリア女たち』を軸に、
雑多に見える膨大な数のセバール作品が形成する一貫性を読みと る。
鵜戸は、アルジェリア人作家、カメル・ダーウドの『
もうひとつの「異邦人」 ムルソー再捜査』を取りあげ、世界的古典を反転さ せて語り直した話題作を紹介しつつ、
アルジェリア文学の新たな動向と、
複数言語の併用から醸成されるこの文学の独自性を強調す る。
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