デジタル情報の発展が人文学研究の実践の場にインパクトを与えるようになってすでに久しい。かつては多大な労力をかけねば閲読でき なかった中世から初期近世、近代にいたる稀覯本も、Gallica や Google Books などを始めとするデジタルデータの普及によってアクセスの 様態は大きく変容した。また横断的な全文検索システムの進展は、人文学における読解アプローチを以前よりはるかに多様化させつつもあ る。さらに、Web を介した研究情報の国際共有を目指す共通のプラットフォーム構築向けた国際研究の動きも拡大してきた。
Seguin 氏が牽引しているデジタルアーカイブ・プロジェクト、Réseau Européen d’étude de la République des Sciences は、そうしたトランス ナショナルな学術活動のひとつとして、ヨーロッパのみならず世界の研究機関と連携してアーカイブを構築しようとする人文学研究情報の 最新研究である。個人の作家・作品研究とは異なる多様で大規模な電子コーパスの構築とその利用を対象としており、フランス文学の分野 で従来より刊行・公開されてきた作家を中心とするデータベースとはやや異なるアプローチを採る。従来とは異なるどのような方法を取っ ているのか。それが初期近世のテクスト読解にいかなる可能性をもたらすのか。デジタルアーカイブ研究の意義と課題、あるいは日仏国際 共同研究のさらなる研究連携の方法などを含め、ワークショップとして会場からのコメントの時間を十分にとりながら、多面的に議論を深 めていきたい。