お知らせ

2015年度秋季大会のワークショップ音声をアップしました。
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2015年度秋季大会

ワークショップ2

関係性の中に置かれたフランス

─ モダニズムの時代における黒人文化表象をめぐって

2015111日・京都大学)

 

吉澤英樹(コーディネータ・パネリスト、成城大学)

元木淳子(司会、法政大学)
三宅美千代(パネリスト、慶応義塾大学)

柳沢史明(パネリスト、東京大学)

 

 本ワークショップは『ブラック・モダニズム―間大陸的黒人文化表象におけるモダニティの生成と歴史化をめぐって』(未知谷)の刊行と連動して企画されたものである。20世紀初頭に改めて「発見」された「黒人」という主題と、両次大戦間の知の枠組みの変動との関わりを解明するプロジェクトの一環として今回は柳沢史明(美学・民族芸術学)と三宅美千代(英語圏文化・文学)と協力し、黒人文化表象が持ちえたモダニティを関係性において考えることを目的としている。当日は吉澤が、シュルレアリスムの使用権をブルトンと争ったイヴァン・ゴルの妻クレール・ゴルの小説『ニグロのジュピター、ヨーロッパを席捲する』(1928)を中心に、ドイツ表現主義と当時のフランスの芸術運動との関係を黒人表象の傾向から分析する。三宅は、アラゴンやベケットと親交をもつ英国人ナンシー・キュナードが20年代後半にフランスで展開した印刷所運営と、アンソロジー『ニグロ』(1934)の編集活動を取り上げ、間大陸的なモダニズムに内在する黒人問題をめぐる差異や隙意に注目する。柳沢は、両次大戦間のベルギーとフランスの植民地行政間の相互影響関係や軋轢が黒人芸術の受容や再生産に与えた影響について、ベルギーの幻想文学作家フランツ・エランが1922年に発表した黒人彫刻を擬人化した小説の中にその反映を読み込む。アフリカ文学専門家で司会の元木は、議論を整理しコメントを介して会場へと議論を開く。こうして本ワークショップは、一つの主題を広域的なコーパスにおくこと、さらに他のディシプリンとの交差の内にフランス文学の特色を側面的に浮かび上がらせることも目的としている。




2015年度秋季大会

ワークショップ5

文学と悪とモラル

2015111日・京都大学)

 

松澤和宏(コーディネータ・パネリスト、名古屋大学)

越森彦(パネリスト、白百合女子大学)

海老根龍介(パネリスト、白百合女子大学)

北原ルミ(パネリスト、金城学院大学)

 

文学(研究)の根拠が厳しく問われている今日、久しく軽視されてきた観のある文学と悪とモラルの関係に光をあててみたい。越は、リスボン大震災(1755111日)を契機にしてヴォルテールとルソーの間で展開された悪の存在と最善説の正当性をめぐる論争の内容を確認したのちに、言説分析の立場から『リスボンの災禍についての詩』・「ヴォルテール氏への手紙」・『カンディード』という論争的テクストにおける説得手段としてのレトリックを分析する。ボードレールは『悪の華』について「悪から美を引き出す」と書いたが、「悪」は作品の主題にとどまらない。何かを描くという行為や芸術作品によって魅了することもまた、暴力の行使という一面を持たざるを得ないし、芸術家の方もジャーナリズムや公衆からの暴力を逃れられない。海老根は、芸術的創造をこうした力の葛藤の場と捉えるボードレールの姿勢を紹介する。松澤は文学とモラルを切り離したなどと言われるフローベールの『ボヴァリー夫人』においてブルジョワ道徳が問題視されていることを読み解く。美徳の「報い」を期待する功利主義的な作中人物の傍らで、報われない美徳を生きる作中人物がグロテスクな相を帯びて描かれ、報われない美徳が書く営みにまで及んでくることを明らかにする。ペギーは、1895年の社会党入党直後に三幕劇『ジャンヌ・ダルク』を執筆し、1910年の『ジャンヌ・ダルクの愛の神秘劇』においてカトリック信仰への回帰を公に示した。北原は、ドレフュス事件、政教分離法等で政治的対立の深まる世紀の変わり目に、ペギーが、ジャンヌを通して、悪の問題をどのように提起したのかを明らかにする。



2015年度秋季大会

ワークショップ6

近代科学と芸術創造

19-20世紀における科学と文学の関係-

2015111日・京都大学)

 

真野倫平(コーディネーター、南山大学)

梅澤礼(コーディネーター・パネリスト、立命館大学)

松村博史(パネリスト、近畿大学)

石橋正孝(パネリスト、立教大学)

橋本一径(パネリスト、早稲田大学)

 

2012年から3年間にわたり、真野の発案のもと、共同研究「19-20世紀のヨーロッパにおける科学と文学の関係」が行なわれた。これは近代の科学や技術が同時代の文学・芸術作品にいかに反映されているのかを、学際的な視点から解明しようとするものであった。その成果は、20153月に出版された共著『近代科学と芸術創造——19-20世紀のヨーロッパにおける科学と文学の関係——』(真野倫平編、行路社)として実ることとなった。本ワークショップでは15名の共同執筆者のうち、4名が代表して報告を行なう。

まず石橋が「科学に共鳴する文学」の例として、当時の科学リテラシーからすれば荒唐無稽だった気球操縦法がなぜゴーティエやユゴーを熱狂させたのかを考察する。次に松村が、「科学を利用する文学」の例として、バルザックが18世紀以前の体質論の医学と、19世紀の観察医学の違いを意識しつつ、2種類の異なる医者像を造形していることを取り上げる。だが科学と文学の関係は必ずしもつねに良好なわけではない。梅澤は「科学に利用される文学」の例として、作家たちによる監獄描写を否定する形で監獄学が生まれたこと、そうした監獄学への反発が作家たちをさらに監獄問題へと駆り立てたことを示す。最後に橋本が、「科学に抗する文学」の例として、ミシンの普及により閉じ込められるようになった女性たちにとって工房が一種の文学的空間となっていたことを明らかにする。

本ワークショップは、従来のアカデミックな文学研究では軽視されがちであった領域に注目することで、文学を、一つの時代を支配する知の制度の一環として考察するものであり、分野・世紀を越えた活発な意見交換が期待される。