2012年度春季大会
ワークショップ2
いかにしてフランス映画を教えるか?―方法論的エスキス
(2012年6月3日・東京大学本郷キャンパス)
野崎歓(コーディネーター、東京大学)
中条省平(学習院大学)
伊藤洋司(中央大学)
教育の場におけるフランス語、フランス文学の衰退が言われて久しい。その対抗策として、映画を教材に用いる教師は少なくないが、実際のところ授業はどのように行われているのだろうか。いったい何を、どう教えるべきなのか。映画論の授業を担当し、また映画について評論活動も行っている三人が、それぞれの経験にもとづき率直に語り合った。
中条は、教師は数ある映画の中からある種、残酷な選別・排除の上で、歴史的に評価しうる作品を自分の責任において選び出すことがまず必要であると説く。そうした姿勢の倫理性が、映画を教える際のよすがとなる。
伊藤は、大学の講義で映画の技術や知識を説明することはいくらでも可能だが、映画において本当に大事なものは教えられないと考える。だが悲観する必要はない。そもそも映画の特質は、否定表現を知らず、肯定表現しかないことにある。映画を通じて、学生は世界を肯定する精神に触れることができるのだ。
野崎は、文学と映画のあいだを行き来する授業の可能性を強調する。どちらがより優れているかという視点で考えるのではなく、それぞれに固有の表現形式に目を開き、そこに広がる豊かな物語性に身を浸すことは、学生にとって意義ある体験となるのではないか。