2012年度秋季大会
ワークショップ4
ソシュール没後100年―100年の言語学
(2012年10月21日・神戸大学六甲台キャンパス)
金澤忠信(コーディネーター、香川大学)
阿部宏(東北大学)
加賀野井秀一(中央大学)
鈴木隆芳(大阪経済大学)
松澤和宏(名古屋大学)
フェルディナン・ド・ソシュールは1913年2月22日に55年の生涯を終えた。2013年が没後100年にあたるわけだが、本ワークショップは100回目の命日を前にして、ソシュールについて語るために、企画されたものである。ソシュールの死から100年後に、言語学においてこの100年間になされたことを列挙するだけでは、つまり「言語学の100年」を語るだけでは不十分である。むしろ彼の切り開いた言語学の地平そのもの、いわば「100年の言語学」を語らねばならない。我々は今なおまさにその地平に立っていながら、ソシュールを前世紀の遺物として葬り去ろうとしている、あるいはすでに葬り去ったと思い込んでいるだけかもしれないのだ。ワークショップではまず、ソシュールが19世紀の歴史比較言語学や文献学の分野でなしたこと、および20世紀の構造主義思想との関わりや、認知言語学からの批判などについて概説する。そのあと比較的個別的な事例について検討する。具体的には、①構造主義的な音韻論とソシュールの言う「音声学」を比較し、両者の違いを明確にしたうえで、ソシュールの真の意図について探求する。②ソシュール没後50年に記念講演を行ったバンヴェニストが、2012年に出版された論集ではかなり批判的にソシュールに言及していることについて考察し、ソシュールとバンヴェニストが抱えた問題の本質的な差異について再検討を試みる。③一般言語学に関する草稿を収録した Écrits de linguistique générale(Gallimard, 2002)の校訂上の問題点を指摘したうえで、ソシュールにおける「書物」あるいは「順序」の問題を提起する。