2012年度秋季大会・ワークショップ2




2012年度秋季大会
ワークショップ2
「文学的なもの」の身分規定をめぐって
―ポール・ベニシュー『作家の聖別』翻訳出版を機に―

(2012年10月21日・神戸大学六甲台キャンパス)


小倉孝誠(コーディネーター、慶應義塾大学)
片岡大右(東京大学)
辻川慶子(白百合女子大学)
森本淳生(一橋大学)


ポール・ベニシュー(1908~2001)のロマン主義論四部作(1973~1992)は、18世紀中葉の哲学者たちから19世紀前半の歴史家、宗教者、自由主義者、社会主義者等々の思想的営為までを視野に収めつつ、ボードレールやフローベル(社会への呪詛)を経てマラルメ(社会からの隠遁)に至る近代の文学的冒険の道筋をたどる重要な業績であり、様々な批判や修正的見解にもかかわらず、今日のフランス文学史の基本的なパースペクティヴを規定し続けている著作ということができる。さらにまた、最初の二巻―とりわけ『預言者の時代』―に関しては、近代の脱宗教化のプロセスにおける精神的諸価値のありかを問う文脈では、社会科学の諸分野においても必読の参考文献となっている。すでに古典としての地位を得ているこの連作の翻訳プロジェクト(水声社刊)の第一弾として、本年秋に第一作『作家の聖別』が刊行されることになっており、一年後には第二作の『預言者の時代』が続く見込みである。本ワークショップでは、小倉の司会進行のもと、まずは監訳者の片岡が全般的なプレゼンテーションを行う。ついで共訳者のひとり辻川が、ネルヴァルとその周辺を論じながら、ベニシュー的問題設定の射程を推しはかる。最後に森本が、マラルメ/ヴァレリーにおける「純粋文学」の戦略の分析を通して、ベニシュー以後今日に至るまで盛んに論じられている―例えばジャック・ランシエールの業績―、近代社会における「文学的なもの」をめぐる議論に、新たな光を投げかける。本ワークショップが、ベニシューの業績の(再)検討を超えて、非宗教的な精神的権力の形成とそこでの「文学的なもの」の身分規定をめぐる議論の、活性化の契機となることを期待している。


 

 

2012年度秋季大会・ワークショップ4





2012年度秋季大会
ワークショップ4
ソシュール没後100年―100年の言語学
(2012年10月21日・神戸大学六甲台キャンパス)


金澤忠信(コーディネーター、香川大学)
阿部宏(東北大学)
加賀野井秀一(中央大学)
鈴木隆芳(大阪経済大学)
松澤和宏(名古屋大学)

フェルディナン・ド・ソシュールは1913年2月22日に55年の生涯を終えた。2013年が没後100年にあたるわけだが、本ワークショップは100回目の命日を前にして、ソシュールについて語るために、企画されたものである。ソシュールの死から100年後に、言語学においてこの100年間になされたことを列挙するだけでは、つまり「言語学の100年」を語るだけでは不十分である。むしろ彼の切り開いた言語学の地平そのもの、いわば「100年の言語学」を語らねばならない。我々は今なおまさにその地平に立っていながら、ソシュールを前世紀の遺物として葬り去ろうとしている、あるいはすでに葬り去ったと思い込んでいるだけかもしれないのだ。ワークショップではまず、ソシュールが19世紀の歴史比較言語学や文献学の分野でなしたこと、および20世紀の構造主義思想との関わりや、認知言語学からの批判などについて概説する。そのあと比較的個別的な事例について検討する。具体的には、①構造主義的な音韻論とソシュールの言う「音声学」を比較し、両者の違いを明確にしたうえで、ソシュールの真の意図について探求する。②ソシュール没後50年に記念講演を行ったバンヴェニストが、2012年に出版された論集ではかなり批判的にソシュールに言及していることについて考察し、ソシュールとバンヴェニストが抱えた問題の本質的な差異について再検討を試みる。③一般言語学に関する草稿を収録した Écrits de linguistique générale(Gallimard, 2002)の校訂上の問題点を指摘したうえで、ソシュールにおける「書物」あるいは「順序」の問題を提起する。